ライティングクリエイターの菊地です。

 

私は一時期「宣伝会議」というところのコピーライターの養成講座に通っていたことがあります。

 

 

宣伝会議のコピーライター養成講座は月・水の週二回の講義を受ける平日コースと土曜日に2コマ受ける土日コースの二つあって、期間はどちらも半年で料金も17万円と同じです。

 

正直この講座については、入る前から冷やかし半分みたいなところがありました。なぜならこの講座はキャッチコピーを考えるという世間一般がイメージするコピーライターの養成講座であって、私のようにアフィリエイトやインターネット上のライティングに生かすということは考えにくいものでした。それに関する情報商材は色々ありますしね。

 

それでもなぜこの講座を受けたのかというと

①入会金が経費として算入できるから
②もしかしたら何か得る話があるかもしれないから
③人との繋がりが出来るかもしれないから

 

こういう理由があったからです。

 

元々講座自体にそこまで期待していたわけではなかったので別に良いのですが、やはり率直に言ってそこまでしっくりくるものではありませんでした。

 

とはいえこれは人によると思うので、なぜ私には宣伝会議の講座が合わなかったのか?また私とは違って宣伝会議のコピーライター養成講座が合う人はどんな人なのか?

 

こういったところを実際に通っていた体験も交えてお話していきたいと思います。

①講師が毎回変わる

宣伝会議の講師というのは基本的に毎回変わります(例外として数回講義を受け持つ人もいますが)。

 

その講師たちの肩書はそうそうたるもので電通の人とか、博報堂の人とか、独立している人とか「すごい肩書きの人達の色んな話を聞ける!」と思わせるわけですね。

 

「色んな人の話を聞ける」と言えば聞こえはいいけど、要するにカリキュラムが体系化されていなくてそれぞれ好き勝手なことを言っているんですよ。

 

だから人によって言っていることがバラバラで矛盾していたり、あるいは同じことを言っていて重複していたり、前回の講義を踏まえたさらに深い講義をすることが出来なかったり、と様々な弊害を生み出しているように思えます。

 

まあこういった講座で「専任の講師を一人設ける」ということはなかなか難しいのだと思います。

 

単純に広告業界の人は忙しくてスケジュールを拘束することは難しいというのもありますが、広告はひたすら実務・実践によって培われた「生きた知識」でなければ意味がありません。

 

大学受験の勉強のように分かりやすい答えがあるわけではなく、ひたすら結果を求められますからね。

 

仮に「広告専門の講師」みたいな人がいてずっと教えてくれているとしても

「で、あんた普段何やってるの?」

とその実力を疑問に思うことは間違いないでしょう。

 

だから私は、広告の実務で結果を出した人が本や電子書籍などにそのノウハウを書き記してそれを学ぶという形のほうがどうしても効率が良いように思えてしまいます。

 

そうすれば一人の言うことを体系化して学ぶことが出来るし、講師のスケジュールを拘束する必要もないし、運営側のコストも安くなるから17万円なんて料金も要らなくなる。

 

ただ、宣伝会議というところはそうやって電通やら博報堂やらの講師をたくさん呼んでそれを看板にするお祭り騒ぎみたいな講義で60年間もやってきたので、そのやり方を今更変えないと思います。

 

通常こういったスクールで講義を欠席してしまった時には「補講講座」が受けられるものですが、宣伝会議の補講講座は「会場に直接行かなければ見られない」という原始的な手段でずっとやっていました。しかも日時を指定されて、それ以外の時間は受けられないというものです。

 

これがやっとインターネットを使用した「オンライン補講」というものを受けられるようになったのがなんと2015年からというのです。しかもこれがそれまでと同じように指定された日時、時間以外は受けられないというなんともお粗末なシステムです。

 

インターネットが当たり前になったこのご時世でこれだけ化石化されたスクールというのも珍しいでしょう。

 

ま、そのシステム面での古さはともかくとして私はこういうパッケージだけを豪華に見せる商売のやり方というのはあまり好きではありません。

②数字ベースでの結果の話をしてくれない

私が宣伝会議のコピーライター養成講座を受けていて思ったのが、広告マンというか広告業界の人は「〇〇賞受賞」みたいなコンテスト入賞することを拠り所にしている人が多いな、ということです。

 

毎回講師が変わるので、講義の最初には大体その講師が携わったCMを見せられるんですね。

 

その中でカンヌ広告祭で入賞したとか輝かしい経歴を話されるんだけど、聞いてる側としては何がすごいのかいまいちピンと来ないわけです。

 

偉い人に認められたから凄いってことなんだろうけど、広告の良さの基準は「どれだけ多くの人の行動を促すことが出来たか」、もっと言えば「どれだけ売り上げを向上させたか」だけであって、お偉いさんが机の上で評価を下すことではないと思うんですよね。絵や音楽などの芸術の話をしているわけではないのですから。

 

仮に広告の賞レースをするなら、一般人に見せて一番良いと思ったコピーに投票させるというものの方がよっぽど実利的だと思います。まあそれも現実的には組織票とか忖度とかあって公平には決められないんでしょうけど。

 

実際、こういった広告賞というのは業界全体のイメージアップのために選ばれることが多いようです。

 

だから宣伝会議の講師が凄い賞を受賞したことをいくらドヤ顔で話されても

「そのCMを作った前と後でどれだけ売り上げが変わったんですか?」

と、常にこんな疑問が付き纏うわけですね。広告賞については後ほど詳しくお話したいと思います。

 

 

で、その数字で裏付けされた話をしてくれないものだからその講師が言うこともイマイチ信用できなくなってしまうわけですね。

 

唯一聞いた数字ベースの話は「広告産業」全体の市場規模が5兆円くらいで、これは百貨店産業と風俗産業のちょうど間くらいで、これを新宿の地理になぞらえて「伊勢丹と歌舞伎町の間くらい」みたいな話はしていましたね。少なくとも自分が覚えているのはそれくらいです。

 

 

私はアフィリエイトというひたすら「数字の結果を突き付けられる」ビジネスから入ったのでどうしても「数字を向上させること」を追い求めてしまいます。

 

言葉が持つ「人を動かす力」というのはベクトルを変えると様々な結果をもたらすことが出来るので単純にその正解は一つではないのでしょうが、私自身の仕事の正解が「数字を向上させること」にあるという意識の根本的なズレがありましたね。

③インターネットの広告とそれ以外の広告の考え方の違い

私はアフィリエイトから入ったというのもあり、インターネット上でも使えるようなコピーの書き方を習いたいというのがまず最初にありました。

 

まあ宣伝会議の講座に通う前から「インターネットの広告はそれ以外の広告とは違う」とは思ってはいたものの、そこまで深くそのことを意識していたわけではありませんでした。

 

ただ講座を受けていく中でやはりその違いというのは決定的に浮き彫りになっていったのです。

 

まずインターネット上の広告は、テレビ、新聞、電車の中づりの広告などと違って「スペースが無限にある」ということが挙げられます。

 

つまりどんなに長く広告文を書いてもいいということです。

 

「長すぎるコピーというのはない。退屈なコピーがあるだけだ」

 

というのは広告界では有名な言葉ですが、インターネット上ではこれを最大限に使うことが出来ます。

 

時には商品を手にすることで得られる素敵な未来をリアルに描いたり、時には商品を買わず現状を放置することでどれだけ恐ろしいことが起こるかという恐怖を煽ったり、時には事細かに商品のメリットを説明したり、読む人が退屈に感じない限りは「長すぎるコピーはない」というのを体現したコピーを作ることが出来ます。

 

しかしテレビ、新聞、中づりといった広告はスペースが限られているので、少ないスペースを使って言うべきことはどうしても厳選する必要がある。

 

もっと言えば具体的な売り込みをかけるコピーの書き方を習えなかったということです。

 

この違いというのは単にスペースが限られているということだけでなく「属性を絞れない」というマス広告の弱点もあります。

 

つまりどんな人が見るか分からないから、なるべくたくさんの人が反応するようなコピーの書き方をするということ。

 

その考えはインターネット上でも同じはずなんですが、インターネット上の広告はこういったプッシュマーケティングとは異なる「プル型マーケティング」の手法になります。

 

「検索ワード」という目に見える形でその欲求をあらわにしているのである程度属性を絞ることは容易い。つまり少なからずその分野に興味を持つ人が訪問することがほとんどだから、こういったマス広告の「なるべくたくさんのひとを引き付ける」という考え方というのはそれほどマッチしないわけです。

 

私が知りたいのは、どんなに長い文章であっても読む人の興味を引き付けてひたすら「数字を向上させるのに必要なこと」なのでこの違いは決定的になりました。

広告賞を取る意味とは?

広告賞についての話を少し掘り下げていきたいと思います。

 

宣伝会議の広告の賞の話でほぼ必ず出るのがTCC(東京コピーライターズクラブ)という組織のものです。TCC賞はコピーライターの登竜門的な賞で、「あっち側」のコピーライターにとってはこのTCC賞を受賞することは結構重要みたいです。

 

そんなTCCの2016年のコピーがこちらです。

「誰に、ほめられたいんですか?」

 

というコピーから始まり

「いいね!」と
仲間うちに褒められるのも
うれしいんでしょうけど、
本当は、誰よりも、
一番厳しいあの人に褒められたい。
ですよね?

 

と続いています。

 

賞レースで入賞したいっていうのはもれなく「褒められたい」が動機になるわけですが、本来「褒められる」というのは何か結果を残してその延長線上にあるものでしかなく、単に「褒められたい」を目的にするのでは子供と変わりません。

 

この「褒められたい」というのは広告業界にいる人たちのことを一言で良く表している言葉だと思います。

 

広告代理店に勤めている人や広告業界を志望するような人は良く言えばイケイケ、悪く言えば自己顕示欲が強い人が多いように思えます。私自身も宣伝会議に通っていた時に業界志望の学生に志望理由を聞くと

・有名になりたい
・業界でブイブイ言わせたい
・単純にモテたい

こんな理由が多かったです。

 

ただこのコピーの目的は「コピーの応募を増やすこと」にあるので、その目的が果たされるならコピーとしては成功なんです。広告業界や広告志望の学生にリサーチをして「広告業界の偉い人に褒められたい!」という人が多かったから「誰に、ほめられたいんですか?」が出てきたのかもしれませんしね。

 

では結果を見てみましょう。2016年のTCCへの応募数は6839点です。これは過去五年のTCCへの応募数と比べると

 

2013年     6556点

2014年 6872点

2015年 6819点

2017年 6071点

 

となっており、過去5年の間では2番目に応募数が多かったことになります。ただ、毎年の応募数を見る限りでは誤差でしょう。毎年応募する人はほぼ固定されているでしょうからね。つまり結果としては「誰に、ほめられたいんですか?」では応募は増えなかったということになります。

 

まあもしこのコピーで応募が増えても「褒められたい願望が強い人」が多いってことになりますから、むしろ増えなくて良かったと思います。「コピーの賞レースの主催なのに効果がないコピーを垂れ流している」というだけの話ですからね。

 

というか「誰に、ほめられたいんですか?」は、リサーチして生まれたのではなく、どうせ毎年の応募数がほとんど変わらないから好き勝手書けるというのを良いことにTCC内のお偉いさん方が

「お前ら、俺たちみたいな偉い人に褒められたいだろ?」

という気持ちで作ったという疑惑が生まれてくる。

 

それに反抗するようにして2017年の応募数は急落しています。それまで毎年の応募数がほぼ固定されていたのに、です。2016年のコピーを見た業界人が「あんたら爺さんに褒められたくてやってんじゃねえよ!」って思ったからなのかもしれません。

 

もしそうなら広告業界は私が考えているより健全なのでしょう。ただどちらにしてもTCC賞自体の内輪感や、TCC賞含めた広告賞を受賞することの無意味さが浮き彫りになり、広告賞大好きな講師陣の話は「オレは過去にこんなすごい広告賞取ったから、賞取れるような書き方教えてやるよ」という話になっている可能性が高い。

 

数字での結果を示してくれないからこそ、その疑惑はなおさら深まります。

「ことばは第2のあなたです。」宣伝会議の講座の広告のコピーに疑問

ついでに言うと宣伝会議のコピーライター養成講座自体の広告のコピーも個人的にはあまり好きではありません。

これが宣伝会議のコピーライター養成講座の2017年の広告コピーです。

 

広告というのは

「何を言いたいのかよく分からない美辞麗句」

よりも

「表現に真新しさは無くても何のオファーなのか明確に分かる言葉」

の方がずっと効果があります。

 

「コピーライター養成講座」というのはオファーを明確にしていると思いますが

ことばは第2のあなたです。

というのは正に「何を言いたいのかよく分からない美辞麗句」になっています。しかもどこかで聞いたことがあるような、退屈で陳腐な表現ですよね。

 

宣伝会議での講義の中でも

「How to sayよりもWhat to sayの方が重要」(どう言うかよりも何を言うかが大事、ということ)

と言っているんですけどね。

 

ただこれは宣伝会議の講義に限らずコピーライティングの書籍には当たり前のように書かれていることです。さらに言うと

①そのオファーが持つ特色(メリット)
②そのオファーによってもたらされる利益(ベネフィット)
③そのオファーが誰に向けてのものなのか分かる言葉(ターゲティング)

などを本来なら言うべきなのです。大勢の人は「自分に良いことがあるかどうか」という基準でしか広告を見ていないからです。その原則を宣伝会議自ら守れていないというのは皮肉な話ですが、それを踏まえるとこの広告には

 

「電通・博報堂などの大手代理店所属の現役バリバリの業界人が講師陣に! →①

「将来の仕事につながるコネが出来ます!」 →②

「急に広報担当の仕事を任され、多くの人の心を動かす言葉の使い方を学びたい方に」 →③

 

こういったコピーを入れた方がおそらく効果は高いです。適当に考えたので表現に美しさはありませんが、少なくとも何を言いたいのかは明確になっているはずです。

 

広告の役割は「興味がなかった人にも行動を促すこと」にあると思うのですが、「ことばは第2のあなたです。」ではその効果は期待できないと思うし、広告が無くても講座に通っていたであろう、元々コピーライターに興味がある人からしても鼻で笑うレベルのコピーだと思います。

 

ついでに言うと「開講60周年」というのも見る人にとってはメリットでもベネフィットでもありません(60周年特別割引とかあるなら別ですが)。これは「60年もの長い間続いている講座だから信用できる」という社会的証明の心理を狙ったのかもしれませんが、これを言うくらいならもっと他に言うことがあるはずです。

 

まあこの広告の最大の謎は傘を持っている女性のアップ写真なんですけどね。

広告業界は「人とのつながり」が重視される

なぜこんなお粗末なコピーで成立しているのかは謎ですが、個人的な憶測で言うと「宣伝会議の講座の卒業生が作成した」というのが一番しっくりきます。

 

実は宣伝会議の講座というのは広告での集客よりも「人の紹介」が多いのです。実際、他の人に宣伝会議のコピーライター養成講座に来た理由を聞くと

「先輩に勧められたから」
「会社の研修で来た」
「講師と知り合いだったから」

など、人に紹介されたという人がほとんどでした。

 

つまり講座の集客に広告の有無はあまり関係ないのでしょう。だから講座に通っていたよしみで練習がてらに仕事を与える。そうやって箔をつけてやることでその人が将来出世すれば宣伝会議の講座自体の長期的なブランディング向上に繋がりますからね。

 

実際、広告代理店に勤めて大成するには「コネを作ること」や「賞を受賞すること」は必要になってくるのだと思います。「宣伝会議に通っていたこと」もその一つでしょう。

 

「あいつ〇〇賞受賞したからこの仕事やらせてみようぜ」

「あの人面白そうだから一緒にやってみたいな」

 

宣伝会議の講師も言っていましたが、仕事が与えられるのは本当にこんな理由なんだそうです。こんな風にコンテスト入賞することや人と繋がることが次の仕事につながっていく。それはコピーライターというものが誰でも使える「言葉」を使う職業であり、その「言葉」の効果を客観的に計測することが難しいからなのでしょう。

 

人間は他人を評価する時に容姿、仕草、学歴など表面的なところから推測しますよね。それと同じで「〇〇賞を受賞したこと」や「△△さんから紹介された」というのも評価の基準になる。だから「賞を取るためのコピー作り」というのは広告業界で成功するには必要だと思います。

 

スクールとは「安心」を買うところ

これは宣伝会議の講座に限ったことではありませんが、スクールって要するに「安心」を買うところだと私は思うんです。

 

受験勉強なんかは顕著で、「受験は人生に一度しかないから」という理由で失敗したくないって多くの人が考えますよね。

 

独学でやっても合格する確率はありますが、それよりは塾や予備校に通ってプロに教わったほうが合格する確率を上げられるという「安心」を買うために通っているのです。

 

そういう意味ではこの宣伝会議というのも

「コピーライターになるために最善の策を施している」

という「安心」を買えることが出来るので、電通や博報堂に新卒で入社したい学生にとってはこの上なく魅力があると思います。

 

電通や博報堂といった大手広告代理店や有名なCMを傘に講師のブランディングを向上させ、講義の主観的な価値を高めるというのはそのままマス広告の本質を突いた手法でもありますからね。

 

私はそういった肩書きよりも実を取ることを優先していたので宣伝会議の講義は合わなかったというだけです。

 

個人的にマス広告にありがちな耳触りの良い抽象的な言葉って苦手なんですよね。まず本当に効果があるのかよく分からないし。例えばJTの「ひとのときを、想う。」なんてもう意味不明です。タバコ売ってる会社が何言ってんだって感じですね。

 

私は本来ならこういうCMを見た視聴者は怒るべきだと思います。要するに

「お前らバカだからこういう言葉大好きだろ?」

と視聴者をナメてるんですよ。今やそんな聞こえの良い言葉では誤魔化されないと主張するべきだと思います。

 

とりあえずアフィリエイトやインターネットビジネスに使えるコピーライティング力が身につくか、というとあまり期待しないほうが良さそうです。

 

一応売り文句として「言葉を使ったコミュニケーションを学ぶ講座なのですべての人に役に立つ」などと言っていますが、実質は広告業界志望の学生向けの講座だと思います。本当に売り込みの文章を書くのなら、書籍を何冊か読んだほうがずっとコストパフォーマンスが良いと思います。この講座の料金が1万円とかならまた別ですが、17万円もかかりますからね。

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